ハリウッドで学んだ、照明づかいを活かし、「デバイスのない未来」を表現——『FURNI』ブランディングムービー制作秘話
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foriio

映像で自身の日常を発信する、VideoとBloggerを掛け合わせた“Vlogger”としてクリエイターのキャリアをスタートさせ、いまや世界的にも知られる企業のブランディングムービーを手がけるまでに、活動の幅の拡張し続けてきたAri Keita氏。

同氏は、高級家具EC『FURNI』

https://furni.style/

が2018年6月にをリリースしたアプリで、そのブランドイメージムービーを手がけた。AR(拡張現実)が持つ近未来的なイメージを、トレンドを取り入れた照明使いなどで巧みに表現。Ari氏ならではのエッセンスが詰め込まれた作品となっている。

クリエイティブの魅力もさることながら、今回のプロジェクトが、”極力会わない”制作スタイルで進められたというところも興味深い。制作の過程や、そこで生まれた工夫を伺う。

​​Ari Keita/アリケイタ

映像制作者

https://www.foriio.com/ariorali

​​1985年11月3日生まれ。

​​幼少期をタイ・バンコクで過ごし、大学卒業後はアメリカ・サンディエゴに留学。​​帰国後、YouTubeにてビロガー("ビデオブロガー"と"ブロガー"を組み合わせた自身の造語)のアリとして、動画を制作を開始。​​2012年、YouTube NextUpプログラムに選抜され、参加。映像制作と動画コンテンツの知識を深める。​​2013年、フリーランスとして企業から依頼された動画制作を請け負う。​​2014年、ブレイカー株式会社とパートナーシップ契約を結び、ビジネス、地方創生、人に特化したドキュメンタリー映像とインターネット番組を制作。​​2016年、VERYbig株式会社にて、共同創業者兼社長として就任。

ARを使ったアプリの、10年後の世界を描いた

——ムービーの題材となった『FURNI』とは、どのようなサービスなのですか?

ari: 『FURNI』はもともと、世界中の高級デザイナーズ家具を取り扱うインテリア・家具の通販サイトです。同社が手がけるスマホアプリでは、AR(拡張現実)機能を使いFURNIで取り扱っている高級デザイナーズ家具を自分の部屋に試し置きできる機能を展開してます。

今回の依頼は、このARアプリのブランドイメージ向上が目的でした。そこで、『FURNI』アプリが成し遂げる近未来的な世界観を、CGや照明づかいを工夫することで表現しました。

https://youtu.be/wD6XNpSPRmY

——ただアプリを使っている様子ではなく、部屋に突如現れるCGなど非現実的な描写を、取り入れたのはなぜでしょうか。

ari: 最初は、シンプルに利用シーンを表現する手法も考えました。しかしクライアント側から、「他にないようなかっこいいものを作りたい」というご要望もあり、再構成したんです。そこでうまれたのが、今回の映像で用いた近未来感のある世界観と、ARをわかりやすく表現する方法でした。

10〜20年後に訪れるであろう未来を示してみようと思い、デバイスのないアプリ体験を描きました。

早い段階で、動画コンテを共有しイメージを摺り合わせる

——登場人物の男女は、スマホを使わずにジェスチャでアプリケーションを操作していますね。

ari: スマートフォンなどのデバイスがなくなった世界は、どのようにアプリケーションを起動させたり操作したりしているか。クライアントを含めたチーム全員で模索しました。

僕はもともとSFやCGをふんだんに使った海外映画が好きだったこともあり、近未来的なジェスチャはすぐに浮かびました。そのイメージをチームに共有するために、過去に見た映像作品の中からジェスチャーが使われているシーンのクリップを作ったんです。

https://youtu.be/305ryPvU6A8

Ari氏が例に挙げてくれた、Appleの『HomePod』のブランドムービー

https://youtu.be/w-tFdreZB94

同じく、Microsoftがインストールされた世界を表した『Productivity Future Vision』

——アウトプットのイメージを共有してスムーズに制作を進行するために、ほかにはどのような働きかけを行いましたか?

ari: 早い段階で動画コンテを作ったのはよかったかもしれません。今回の動画では、撮影場所としてアパレルショップの一角を借りました。複数人でロケハンに行き、その場で簡単なイメージを撮影。構図やBGMのイメージを早いうちに共有できたと思います。

より詳細な説明が必要な部分については、絵コンテも書きました。絵コンテを描いた背景には、照明の色にこだわりたいという思惑があり、照明色もかなり細かく指定しましたね。

ハリウッドで学んだ、照明づかいの最新手法

——照明のこだわりとは、具体的にどのようなものだったのでしょうか。

ari: 撮影現場で空間に当てる色をリアルタイムで変えました。最初のシーンは赤と青、そのあとに黄色、最後に 紫と青というように、空間の色が移り変わります。シーンによって、動画の色合いが変化していることはよくあると思うのですが、後からの編集で変える方法が一般的です。しかし今回は、撮影現場で照明を切り替える撮影手法を採用しました。

そのために、何人もの照明さんが一斉に色を切り替える作業が必要でした。タイミング合わせが難しく、ラストのキスシーンは10テイクくらいやりましたね。(笑)

——照明の色を現場で変えるという撮影手法はどこで学んだんですか。

ari: 『EJ - Switches ft Jonn Hart & Porscha Coleman』の制作に参画したことがきっかけでした。去年の8月にロサンゼルスで泊まった民泊先のホストが映画監督だったんですよ。そこで「編集の仕事があれば声をかけて欲しい」と伝えていたところ、すぐに協力のオファーをもらって。ハリウッドで、ヒップホップのMVの編集をサポートしました。

https://youtu.be/nWtRW0fMtLU

僕が担当したのは動画内で使うフォントの作成だったのですが、撮影現場にも同行させてもらいました。そこで驚いたのが、向こうの人たち、演出が本当にウマいんですよ……!

制作が行われたのは2017年だったのですが、現在のトレンドになっているような色使いや撮影手法がすでに取り入れられていて。また照明の当て方や、スモークのかけ方で雰囲気がまったく変わるということを学びました。

特に面白いと思ったのは、ライトをカメラに直接当てるという技法。『FURNI』では取り入れませんでしたが、いつか挑戦してみたいです。

——照明の色に80年代風のネオンカラーを採用したのも、ハリウッドの現場での経験が影響しているのでしょうか?

ari: 80年代風の照明の色を使うという傾向は、ファッション業界を中心によく採用されているので、以前から注目はしていました。

写真をあえてフィルムで撮ったり、ファッションアイテムにも80年代らしいアイコンが取り入れたりというムーブメントが数年前からおこっていて、現在は流行のど真ん中にあると思います。

“極力会わない”でも最高のアウトプットを作り出すためのチーム作り

——編集はどのような流れで行いましたか?

ari: CG担当、カラーコレクション担当、DJなど信頼できるメンバーを集め、僕がタイムラインを作り、全員Facebook Messengerのグループに入ってもらいました。オフラインの打ち合わせはなし。Messenger上ですべてのイメージを共有しました。

——リモートで編集を進めたのですね。コミュニケーションをしたり、イメージを共有するという点で、難しいと感じることはありませんでしたか?

ari: まったくなかったですね。むしろ、移動にかかる時間的なコストを削減できるので、終始いいことしかなかったです。僕はクライアントとのすり合わせも、極力リモートで行っています。Google ドキュメントやスプレッドシートでこまめな報告をすれば基本は問題ないですね。

——離れた場所にいても、イメージ通りのアウトプットを出し合う。そのためにどのような工夫をされているのでしょうか。

ari: 依頼をするときに、詳細に、的確に、伝えるようにしています。ふわっとした依頼は相手にとって迷惑をかけてしまう。イメージ通りのアウトプットが出てこないのは、依頼に問題があると考えています。僕の場合は、コマ数まで指定し、「このタイミングでカットして欲しい」など、テキストでなるべく細かく伝えるようにしています。音楽や動画や照明などの指示をするときは、自分で資料をたくさん集め、依頼相手に共有。共有したものが理解できているかどうかまで確認することが大事ですね。

——現在は、どのような映像制作をしているのでしょうか?

ari: 現在、今回作ったムービーの5年後の世界をテーマにした続編を別案件で制作中です。撮りたい映像に近い映像資料を集めたり、スタジオの情報を集めたりしています。”極力会わない”制作スタイルで、最高のアウトプットを生み出すために、仲間集めにも注力していきたいなと、考えているところです。

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